脳・心臓疾患

20年ぶりに「脳・心臓疾患の労災認定基準の改正」がありました。    ①長期間の過重業務の評価にあたり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化した。②長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直した。③短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化した。④対象疾病に「重篤な心不全」を新たに追加したとなっています。

また、令和2年度「過労死等の労災補償状況」では、脳・心臓疾患の労災補償状況の請求件数、支給決定件数はともに前年度に比べて減っていましたが、年齢別にみると40代に入ると急激な人数増加があります。いかに若いうちから健診データの変化とともに、生活習慣改善の重要性を意識してよい生活習慣行動に移していくかが重要であるのを感じます。

50代に入り脳・心臓疾患を発症された方達の健診データをさかのぼりますと、30代後半あたりから肥満が始まり、コレステロールや肝機能の所見が出始め、高血圧や高血糖と徐々に進んでいる傾向がわかります。これは不規則な生活習慣をそのままにしておけば誰でも例外ではないことですが、なかなか気づきや意識を変え行動変容までは難しい方が多い現状もあります。

企業として職場環境を整えると同時に、従業員への意識改善への情報提供や働きかけも必要です。まずは、ご自身の健診データを経年的に見てみましょう。今の生活習慣は脳・心臓疾患の原因となっていませんか?

 

コロナ禍でのメンタルヘルス

厚労省の令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」では、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスになっていると感じる事柄がある労働者の割合は、54.2%でした。 現在自分の仕事や職業生活でのストレスについて相談できる人がいる労働者の割合は、90.8%で、相談できる相手(複数回答)でみると、「家族・友人」が78.5%「上司・同僚」が73.8%でした。男女別で、実際に相談した労働者の割合は、「家族・友人」は、男性66.8%、女性81%、「上司・同僚」は、男性74%、女性60.5%とあり、男性は「家族・友人」より「上司・同僚」に、女性は「家族・友人」に実際には相談している結果でした。

はたらく人の幸せに関する調査結果(パーソナル総合研究所・慶応義塾大学)では、2020年2月と2021年2月を比較したところ、はたらく幸せの実感はほぼ変わらず、不幸せは減少していて、在宅勤務等のテレワーク実施をはじめ、コロナ禍における働き方の変化によって従来受けていた不快なストレスが軽減しているからだろうとありました。ただ、20代は、テレワーカーと出社者を比較したところ、テレワーカーの方がはたらく幸せの実感は低く、不幸せの実感は高いことが確認されたともありました。さらに、テレワーカーでも「自己抑圧因子(自分なんて)」「オーバーワーク因子(ヘトヘト)」「協働不全因子(職場バラバラ)」「疎外感因子(ひとりぼっち)」については、テレワーカーの方が高い傾向という結果も出ていました。

長く続いているコロナ禍による心身へのストレスは色々な影響が出ているようですが、

基本はセルフケア力で対応しておくことです。気持ちのコントロールが難しい時には、自分にとって好きなことや楽しいことをしてみましょう。体を動かすこと(ラジオ体操、ストレッチ、その場足ふみ等)はおすすめです。また、人とのリアルな交流ができない時には、オンラインや電話、手紙を書く等、自分から発信してみる機会を作って見ることもいいですね。

女性の健康課題

働く女性は労働人口の4割を超えており、女性の管理職も少しずつですが増えてきている状況です。勤務年数も伸び、出産年齢の上昇や生涯出産数減少、平均寿命が伸びる等、女性を取り巻く環境も大きく変わってきています。

今まではどちらかというと男性中心のメタボリックシンドロームや生活習慣病への対策でしたが、今後は女性従業員への健康支援も重要となってきています。

経済産業省の調査では、女性従業員の約5割が女性特有の健康課題により「勤務先で困った経験がある」、また、女性従業員の約4割が女性特有の健康課題などにより「職場で何かをあきらめなくてはならないと感じた経験がある」とありました。

女性の場合、男性とはやや異なった健康問題(骨粗しょう症・骨折、関節・筋肉の変形や弱化、認知症など、女性ホルモンに関連して起こりやすい問題)が多くあります。20代から30代女性の抱えている健康問題、50代以降の女性が抱えている健康問題等、それぞれのライフステージでの関わりの必要性を強く感じています。不調を感じながらもどう対応したらいいのか悩み、仕事のパフォーマンスも低下している状況が続いていることが多いです。職場としてできる取り組みは色々あると思いますが、まずは女性特有の健康課題や症状等に関する教育は必要だと思います。その他例えば、職場で少し横になれる環境があったり、相談しやすい窓口を設置したり、婦人科検診の重要性を啓発したり、婦人科検診受診率向上への取り組みや、柔軟な働き方ができる体制作り等も整えていくことが必要です。

また、女性に限らず、男性も女性の健康問題への関心を持ってもらうことも大切になります。

意識して食べる

毎日食事を意識して食べていますか?

「いつ何を食べるのか」(時間栄養学)を意識すると、体調やお腹周りがスッキリしてくると言われています。 1日3食、食べない人の話を聞くと、たいてい朝食を抜いているケースが多いです。特に若い方にその傾向が出ていますが、シフト勤務者は遅番の際に朝昼兼用で1日2食の人もいます。朝食を抜く回数が多かったり、夜食の頻度が高い人ほど肥満の傾向が強くなることはわかっています。

朝食を抜くと、空腹状態が続くことで脳が飢餓状態を認識して非常時に備えて脂肪合成を促して太りやすくなる、低血糖状態になり作業効率が低下する、必要な栄養が十分にとれなくて、栄養バランスが崩れやすくなり、筋力低下や疲れやすい等が言われています。

多くの生物は体の中に「体内時計」という時計を持っていて、この体内時計をリセットするために朝食が必要なのです。この朝食の時間を目安に体は1日の中でいつ活動して、いつ休息するかを認識します。できるだけ同じ時間に朝食は食べるようにしましょう。

また、体内時計を正しくリセットするには、たんぱく質と炭水化物の両方が必要と言われています。例えば、パン派の方は、サンドイッチ、卵、バナナ、ヨーグルト、チーズ、

ご飯派ならば、ごはん、みそ汁、卵焼き、納⾖、のり等のメニューはおすすめです。

 時間栄養学では、夜遅くの食事では食欲を抑えるレプチンの分泌量が低下し、過食しやすくなると言われていますので、夕食は腹八分目を心がけましょう。

 健康でパフォーマンスのよい生活をするためにも、まずは「朝食」の時間と内容を意識することから始めてみましょう。

血管の弾力性が大切!!

血管は、加齢とともに硬くなり、弾力性を失っていきます。血管の老化は、動脈硬化につながり、血圧が高くなる原因の一つにもなります。脳梗塞や心筋梗塞を防ぐためにも、いかにしなやかでやわらかい血管を保つか、血管力を高めていくかは大切です。 血管は、外膜・中膜・内膜の三層構造になっていて、外膜は血管を保護し、中膜は血管にかかる圧力を調整する役割があります。内膜は血液に直接触れる部分で、繊維からなる薄い層と内皮細胞でできています。この内皮細胞から血管をしなやかに弾力性を強める働きがあるといわれる一酸化窒素(NO)が作られます。

NOを効率的に増やすためには、「血流をよくすること」「血管内皮細胞を傷つけないこと」です。食事と運動とストレスケアがポイントになります。

食事では、タンパク質が豊富な食品(赤肉、魚、鶏肉、豆、大豆、ナッツ等)を取るこ

とです。また、NOを保護してくれるビタミンCやビタミンE(特にトマトやカボチャ等の色の濃い野菜)、ポリフェノールも意識して取るようにしましょう。塩分は内皮細胞を傷つけますので控えるようにしてください。

運動は特別なものでなく、出来るだけ歩いたり(胸を張り背筋を伸ばす、いつもより歩幅を広げてテンポよく)、階段を使ったりを意識してやってみましょう。時間がない方には、ふくらはぎの筋肉を動かす(つま先やかかとの上げ下げだけの運動)や、手のひらを合わせて力を入れて5秒くらい押し合うだけでもNOを増やすことができます。

 それから健診だけでなく、自宅や職場に血圧計がありましたら、ぜひ日頃の血圧も測ってみて下さい。以前より10mmHgほど診断基準が厳しくなっています。

お口の健康

5月は健康診断の所も多いのではないでしょうか。体の健診はやっていても働く方で歯の検診を定期的に行っている方は少ないのではないでしょうか。私は半年に1回歯石クリーニングは行っていますのでその際に虫歯なども見てもらっています。
「8020運動」聞いたことがあると思いますが、80歳で20本歯を残せるよに!と始まったものです。平成28年に50%達成、東京都港区では令和4年60%達成目標なのを令和元年にクリアとの報告がされていました。

逆に最近は「かみにくい」と訴える高齢者が多くなってきています。また歯周疾患は高齢とともに増加していて、歯石が沈着している人が約4割とありました。
特定保健指導の問診の項目には、平成30年から「かむこと」について新たに追加されました。これは、歯周病やむし歯などで歯を失うことによって口腔の機能や咀嚼する機能が衰えることで、野菜の摂取が減り、食べやすい脂質や炭水化物が増加することで生活習慣病のリスクが高まるという指摘からです。その他、口腔の健康と関連する項目として、「喫煙」「食べる速度」「間食や甘い飲み物」もあり、歯周病、肥満、むし歯のリスクに関連しています。
80歳になっても肉を自分の歯でしっかり食べれるように、長く自分の歯を維持できるようにケアしていきましょう。
お口が清潔であるということは長生きの秘訣でもあると言われています。お口周り、咀嚼はコミュニケーション、呼吸等すべてが生きることに直結しています。肌年齢等で一喜一憂しがちですが、口の中のケアをしっかり行っていければ寿命や若々しさにもつながるのではないでしょうか。

1日2万回!

私達がマスク生活になり、だいぶたちます。今年はマスクによって花粉症やインフルエンザは比較的軽くて済んだ方も多かったようです。ただ、マスクをしていることで口が開いたままになっている方もいるようです。口で呼吸をすることのデメリットは、虫歯や歯周病になりやすい、口臭の原因になる、歯並びが悪くなる、風邪やアレルギーになりやすい、老化を促進するなどたくさんあります。

鼻は天然のマスク、空気清浄器と言われています。外気を取り込む際に、一緒に入ってくるゴミや塵、アレルゲン、細菌やウィルス等を除去したりろ過してくれます。なので鼻呼吸の方が口呼吸より良いと言われています。また鼻は冷たい外気を加温や加湿、肺の水分調整もしてくれます。これらの働きにより、我々は風邪をひきにくかったり、ウイルスに感染しにくくなります。
1日2万回と言われている呼吸を私達は生まれてから死ぬまで一時も休むことなくしています。口呼吸から鼻呼吸にするための簡単で効果もわかっているおすすめの方法が「あいうべ体操」です。福岡のみらいクリニックの今井先生が考案された方法です。
(やり方)
4つの動作を順にくり返します。声は出しても出さなくてもかまいません。
(1)「あー」と口を大きく開く
(2)「いー」と口を大きく横に広げる
(3)「うー」と口を強く前に突き出す
(4)「ベー」と舌を突き出して下に伸ばす
(1)~(4)を1セットとし、1日30セットを目安に毎日続けます。
ちなみに私も毎日お風呂に入った時や隙間時間にやっています。ゆっくり大きく行うと、顔の筋肉もかなり動きますので、表情も豊かになったり気分転換にもなります。


コミュニケーション

3月に入って企業担当者は、新人の受け入れ準備でお忙しいことと思います。

今年の新人はどのような様子でしょうか?

私は新人や入社2~3年目までの従業員の面談をして感じていることがあります。新人もさまざまですが傾向として、社会人として人とかかわる際のマナーやルールを習得していない方が多いのではと思うことがあります。勿論、社会人になって学ぶことや教わることはありますが、その前段階でのコミュニケーションスキルの基本を知らないこともあるのではと思っています。

挨拶しない、謝らない、ありがとうございますが言えない、職場のメンバーが「どこがわからない?」と質問しても、「わかりません」と答えるだけ・・・。勿論本人達もなんか職場でいずらいな、うまくコミュニケーションできていないなとは自覚しているのですが、どうしたらいいかわからないのです。情報をネットで調べることはかなり得意でしていますが、現実は情報や知識だけでは乗り越えられないことが多いのです。職場はどうケアしてあげたらいいかわからず疲弊している状況もあります。中にはコミュニケーションがズレてしまい「顔も見たくない!」とおっしゃる方もいたり・・・。自分からコミュニケーションを取らない等本人にも問題があります。発達障害等も想定されますが、それに関わらずその人の特性をとらえて上手に適応していけるように企業側も情報提供や教育、サポートの工夫も必要だと思っています。

頭痛

コロナによる常時マスクが当たり前になっていますが、それによる「マスク頭痛」が増えてきているようです。 今回は「マスク頭痛」の話しではないですが、日頃の従業員の健康管理をさせて頂く中で、健診の自覚症状で「頭痛」と記載されていたり、面談でご相談される方が多いように感じています。個人的には若い方に多い気がしていますが、男女関係なく、健診データで所見なしの方も「頭痛」の訴えはよく目にします。皆さまはいかがでしょうか。

日本人の3人に一人が”頭痛もち”と言われているようです。病気によって起こっているものもありますが、ほとんどが慢性的におこる慢性頭痛です。人によっては痛みがあり仕事中集中できなかったり、気持ちが前向きになれなかったり辛い思いをされるなど影響が起こっている方がいます。

 頭痛には、定期的に激しい痛みがあり吐き気なども伴う「片頭痛」や、耐えられない痛みではないがほぼ毎日痛みがあり肩や首の凝りが続く「緊張型頭痛」、片側の目の奥に強い痛みが続きアルコールとの因果関係がはっきりしている「群発頭痛」があります。

 痛みを和らげたり、日頃から予防的に行った方がいい対処法があります。例えばストレッチやマッサージは効果的ではあるのですが、行うタイミングや内容が違ったりします。

 頭痛を訴えるわりに、いつ、どのように起こっているか等の状況を伺うと、ほとんどの方が正確に把握していないのを感じます。いつ、どの時間帯、頭痛の程度、どのような頭痛だったか、吐き気や前触れの有無等を簡単に記載しておかれるのも必要です。アプリを活用されるのも手軽かと思います。

それと、頭痛の方は市販の頭痛薬を使っている方が多いです。一時的な痛みの対処に効果があるかもしれませんが、毎回繰り返し飲んでいる状況は心配です。使い方は注意が必要ですし、医師に相談することも大切です。

改めてコロナを乗り切るために

2021年もスタートしましたが、まだまだコロナとの戦いは続いています。

昨年の12月15日に修正があった「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」の中から改めていくつか従業員と共有していただければとピックアップしてみました。 それによりますと、「マイクロ飛沫感染」が追加されました。「マイクロ飛沫感染」とは、微細な飛沫である5㎛(1㎛は、1㎜の1000分の1の大きさ)未満の粒子が、換気の悪い密室等において空気中を漂い、少し離れた距離や長い時間において感染が起こる感染経路の事です。これまでの飛沫感染をさらにこまかくした対応です。

「3密」や「大声」の環境では「飛沫感染」「接触感染」とともに、「マイクロ飛沫感染」も起こりやすいと考えられています。そういう意味では、冬場の換気はこれからさらに重要になってきます。寒さを防ぎつつ室内のこまめな換気をしましょう。日本産業衛生学会の「換気シュミレーター」を活用されるのもいいかと思います。部屋のサイズが分かれば入力して状況の目安はわかると思います。

それから、絶対欠かせないマスクですが、正しく付けていますでしょうか。時々顎までさげていたり、鼻が出ている方を見受けます。正しい付け方は鼻と口、顎まで隙間がないようにきちんと覆うようにして付けます。マスクとともによくテレビでも見る、フェイスシールドとマウスシールドの適切な使い方ですが、ともに単独の使用では飛沫感染を予防することは期待できませんので、これらを使う時はマスクを併用することと、適切なフィジカルディスタンシングを確保して感染を予防しましょう。基本的なことですが、できることをしっかり一人一人が行っていきましょう。また、ひとたび職場で感染者や疑いのある従業員が出た際、国は具体的に対応を行ってくれるわけではありませんから、例えば一旦どこの部屋で待機してもらうのか、消毒はどのようにするのか等、実際を想定して準備をしておく必要があります。