高年齢労働者が働きやすい職場

日本の少子高齢化は進んでいますが、定年の延長とともに、60歳を過ぎても働きたい人は81.8%、65歳を過ぎても50.4%は働らく意欲が高いというアンケート結果もあります。厚労省は、令和2年3月にエイジフレンドリーガイドラインを策定しました。 パワフルなお年寄りが多いのは頼もしい限りではありますが、加齢に伴う心身機能の低下の変化は忘れてはいけない問題ではあります。

また、加齢は個人差が大きく、暦年齢65歳の人の生理的年齢の個人差は16年にも及ぶという研究もあります。これは、65歳の人の中には生理的年齢が50代の若々しい人がいる一方で、生理的年齢が70歳を超え心身機能の衰えが顕著に見受けられる人がいることを示しています。

65歳代の労災発生状況は、25歳代と比べて男性では2倍、女性では4.9倍多くなっています。労災等での休業期間も高年齢労働者では長期に及ぶこともあります。さらに健康状況では、有所見率は年齢とともに上昇していく方が多くいます。

今回私は転倒等のリスクを評価する体力チェックを体験してみました。やってみると自己認識と実際の身体機能の差があり、とてもよい気づきになり、自分が思っている以上のギャップの有無を確かめられます。また、日頃から職場で作業をする際は、色々なリスクを予測しながら歩く習慣を身に着けることも一つです。例えば、安全作業の確認の際に指差し呼称がありますが、その時も「椅子ヨシ!」ではなく、「椅子、押し込みヨシ!」のように「対象」と「状態」を具体的に呼称することが大事になってきます。

企業側は朝職場へ来た状態で仕事を終えて帰ってもらうこと、安全配慮義務を行っていくことが求められます。「エイジアクション100」は安全配慮義務対策を考える時の参考に使ってみるのもいいと思います。

免疫力アップ!

これから気温が下がってくると、インフルエンザや風邪にかかりやすい季節になります。さらに今年は新型コロナウイルスへの感染予防もあります。インフルエンザの予防接種もはじまり、重症化を防ぐためにも、新型コロナとの見分けも難しい中、受けておかれることは大切だと思います。 それ以外にも日頃から「免疫力をあげること」を心がけることも必要です。 免疫力をあげるためには、腸内環境を整えることです。腸には、体内の免疫細胞の60%以上が存在していて、体内で最大の免疫器官と言われています。この腸の健康を保つ事が、免疫力をアップするカギと言えます。  

そこで、腸内環境をよくするには①発酵食品を取り入れる。②食物繊維を摂る。③脂肪やたんぱく質は、取り過ぎには気をつけましょう。

①の代表的なものは、納豆、ヨーグルト、チーズですが、その他、漬物や甘酒、味噌などもです。ただし、塩分の多い漬物やチーズ、糖分の多い甘酒は取り過ぎには気をつけましょう。また、一度にたくさん摂ってもすぐに腸内環境が整うわけではありません。継続して食生活に取り入れることが大切です。

②腸内細菌のエサになる食物繊維を摂りましょう。ごぼう、玄米、豆類、芋類、バナナ、アスパラガス、かぼちゃ、キャベツ、山芋、納豆、海藻、きのこ類には食物繊維が多く含まれます。

③脂肪やたんぱく質は、腸内の悪玉菌を増やしてしまうので、取り過ぎには気をつけましょう。

また、腸は脳の次に多くの神経細胞が存在していて、感情にも深くかかわっているため「第二の脳」とも呼ばれています。できれば「よいイメージを持つこと」を朝行うとよいです。また体験による「知覚映像」であっても「想像映像」であっても脳は区別がつかないので、「想像映像」でもいいのです。その他にも、変えることができないこと(過去と他人)でなく、「変えることができること(自分と未来)」にフォーカスを当てるように心がけることもよいようです。

これからの季節は、腸活で免疫力アップで元気にお過ごしください。

コロナ時代のメンタルヘルス

このところの新型コロナウイルス感染状況は少し減少してきているようですが、まだワクチン等が確立できていない中、しばらくwithコロナは続きそうです。最近の企業サポート活動の中で気になってきているのは、従業員のメンタルヘルス不調者が増えつつあることです。皆様の職場の状況はいかがでしょうか。精神保健福祉センターでの4月の相談件数は、4946件で2月~3月の2か月間の3倍近く急増していました。「不安で心がおかしくなりそう」「眠れない」「職場で感染しないか不安」等です。この状況を受けて、厚労省は8月に1万人規模での初のメンタルヘルス全国調査を実施するとなりました。実際、私がサポートさせていただいている従業員の方々もコロナ前からメンタル不調があった方やコロナ後復帰となった方は、不安定な状況になったりします。上司の方も在宅勤務やオンラインでは関わりの難しさを感じていると思いますが、短い時間でもいいので声をかけ続けて頂くことは大切だとは思っています。ただ意外と人に促されないと実施できないものです。また、オンラインのさまざまなツールを効果的に使いわけることや、部下が相談しやすい環境づくりの一つとして、管理職のあいている時間をわかるようにしておくこと、業務内容に関しての理解の確認や共有は丁寧にして頂く等のコミュニケーション環境を整えることも心がけてみてください。これからは従業員自身のセルフケア力もより求められてくると思います。日頃からのストレス対処法もわかっていてもやるきっかけがない、一人ではできない等も結構あります。職場の仲間や外部からのアプローチも入れながら思い出してもらったりきっかけ作りをしながら体制を整えてみて下さい。

自粛で暑さに慣れていない

今年は新型コロナによる「外出自粛」の影響もあり、我々の体が暑さになれる準備があまりできませんでした。さらにマスクを付けた夏を過ごさなければなりませんので、いつも以上に夏バテへの対策は必要です。体がだるい、疲れが取れない、やる気が出ない、食欲がない等症状は人それぞれですが、夏バテは「自律神経の乱れ」から起こります。冷房の工夫をしながら、食事、運動、睡眠を意識して、体に負担をかけすぎないようにしましょう。

今回は、特に食事についてお伝えしたいと思います。

1日3食食べる。よく言われることですが、特に朝ごはんは1日の生活リズムにも重要です。バランス良く「ま・ご・わ・や・さ・し・い・こ」を食べる。まめ、ごま、わかめ、やさい、さかな、しいたけ、いも、こうそ(味噌等の発酵食品)を取りましょう。

特に夏にはビタミンB群やたんぱく質をたくさん食べること。ビタミンB群は豚肉やうなぎ、大豆の水煮や豆腐に納豆、枝豆等を取るのがおすすめです。夏野菜は、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。色の濃い野菜(トマト、ナス、きゅうり、ゴーヤ、パプリカ、オクラ、カボチャ、ズッキーニ、トウモロコシ等)を取りましょう。 水分補給は「喉が渇いた」と感じる前にこまめに補給しましょう。1日1.2l(1回にコップ1杯:200ml)が目安です。特に今年はマスクをしていますので、感じにくくなっています。大量の汗をかいた場合には、塩分補給も忘れないようにしましょう。スポーツドリンクや経口補水液を活用することもいいと思います。ただ、スポーツドリンク(500ml)には角砂糖7~9個くらいは入っていますので、糖分の取り過ぎには注意が必要です。冷たいものばかり取ると胃腸が冷えて食欲低下につながってしまいます。温かい料理も取るようにしましょう。

手で書くこと

先日、大学の後輩からはがきが届きました。大学の寮で一緒でしたが、年賀状でのやり取りくらいのお付き合いでした。「コロナで大変ですが、元気にしていますか?ふと昔を思い出して・・・」と手書きの手紙で来ていました。とっても心が温かくなりましたし、嬉しさと懐かしさでいっぱいの気分になりました。 皆さんも手書きの手紙を受け取った時、送り手の気持ちが伝わってきたことってあると思います。

「手で書くこと」は、自分の心を整え偏りがちな思考を解き放してくれます。より深く自分を知ったり、ありのままの自分を受け止めることにもつながり、結果モチベーションが上がってきます。ストレスへの耐性も強まり心身の健康へも影響してきます。また、脳を活性化し、記憶力や理解力を高めたりもしてくれます。特に手書きすることで、情報を長く記憶してくれたり、新たなアイデアを理解する上でも効果的だそうです。最近、マインドフルネスという言葉を耳にしますが、「書くことだけに専念する」ことで、色々考えてから書くのではなく、「とにかく手を動かして書いてみること」です。

手書きの効果に改めて魅力を感じ、早速私も毎日の習慣にし始めていますが、実際行うと書きながら頭の中がクリアになっていくのを実感しています。時間も1~2分からでもいいですし(時間は意外と経ってしまいがちなのでタイマーをかけてされるのをお勧めします)、内容も誰に見せるわけでもないですし、手軽にできます。ポジティブな言葉でも、ネガティブな言葉でも、手で書くことで心の中の考えが整理されます。

なかなか不安なことが多い毎日ですが、自分のセルフケアのために「手で書くこと」をしてみませんか

コロナ後

新型コロナの緊急事態宣言が解除され、どんなに3密の対策をしても避けられない事態も起こる可能性も考えていかないといけません。感染したらどうするはだいぶ浸透してきていると思いますが、発熱や風邪のような症状だけが出ている場合や濃厚接触者になった場合等、色々想定しておく必要があります。

各企業では、万が一感染者等が出た時にはどう動くのか、日頃はどう対応しておくのか等、現場や衛生委員会等でよく相談してルールを決め、従業員一人一人がしっかり理解して行動が継続できるよう準備を進めておきましょう。

日本産業衛生学会の「職域のための新型コロナウィルス感染症対策ガイド」に詳細に書かれていますので、是非こちらを参考にされるのもいいと思います。

心配なのが、差別と鬱積だと思います。報道でも初めの頃は少し差別の声や話が伝わってきていましたが、今では数は本当に少ないです。また、どこにもぶつけられない感情をコントロールすることが難しくなっている面も出てきますので、それを吐き出し受け止めるクッションの役割は社会の中で必要です。

リモートアクセスが普及して今は、人と人のつながりを確保するのにオンラインの活用が助けとなっています。私も4月からオンライン面談を開始していますが、個別面談は思っていたよりスムーズだなと思っています。反面、企業担当者やその関係者複数名でケースへの対応についての相談を受ける時によく感じているのは、皆さん表情がなかったり、一生懸命話されるがゆえにものすごく近くに写っていたり、相槌も何もなく反応されていなかったり・・・。相談を受けている私も威圧感を感じたり、話しにくさを感じたりすることも多いです。慣れていないので仕方がない面もありますが、オンラインの場合も少し距離感は保った方がいいですし、発言していなくても聞いていますよというメッセージは伝えてあげることは大切です。一人一人ができることを積み重ねて、全体として行動変容することも必要です。

改めてナイチンゲール

新型コロナでは、毎日感染のリスクと戦い頑張ってくれている医療職や病院関係者の方々に心から感謝を申し上げます。ナイチンゲールは誰でも知っているほど「白衣の天使」として有名ですが、具体的に何で有名になったかは意外と知られていません。実は彼女、感染症の制御の母と呼ばれ、医療衛生改革で著名になったのです。(かなり、統計にも詳しかった)

クリミア戦争に従事した際も、軍からも最初は歓迎されたわけではなかったのですが、その中でナイチンゲールは、どの部署の管轄でもなかったトイレ掃除に目をつけ、それを皮切りに病院の内部に入り込んでいきます。負傷兵への食事の世話や不潔なシーツの洗濯などの献身的な介護や病院の衛生環境の改善に取り組むことで、負傷兵の死亡率を劇的に低下させました。

膨大なデータを誰にでもわかるように図式化して見せたり、病院統計のモデルの提案をして、科学的に統計学的に実践をして、現代の公衆衛生や看護教育の分野で多大な影響をもたらしました。身近な所では、ナース・コールや病室に設置された水とお湯の出る蛇口、ナース・ステーション等、現代の病院で使われている病棟のシステムを開発したのもナイチンゲールです。

我々看護師にとって、学校で一番最初に学ぶのがナイチンゲールの「看護覚書」です。今からは想像できない厳しい現状や困難の中で、どんな時も患者に寄り添い、看護師としてのスキルや観察力を最大限に使って、今できることを何があってもぶれずに積み重ねていった姿、やりっぱなしでなく実施してきたことをきちんと統計学等にも証明していった功績は本当に素晴らしいと思います。5月12日が生誕200年。今回の新型コロナで、いつもなら何となく過ぎてしまう「看護の日」でしたが、改めてナイチンゲールの看護について考えさせられ、個人的に力を頂いた気が致しました。新型コロナが終息して、イギリスのフローレンス・ナイチンゲール博物館を訪れる日が来ることを楽しみに前を向いて進みたいと思いました。

高年齢労働者にとっての安心

4月になり新型コロナの先がまだ見えない中、入社式は行うものの入社後はテレワークになるところも多いようです。年々新入社員の採用数も減少している企業も増えてきています。これからは、若い人とともに、高年齢労働者をいかに安全に安心して働ける環境を整えていくかは大切になってきます。実際、日本の人口推移は65歳以上の比率がどんどん高くなっている中、「65歳以上でも働きたい」と希望する方は、50.4%と高い状況です。(平成25年内閣府「高齢期に向けた備えに関する意識調査より」)人生100年時代ですし、若い人口が減っている中、高年齢労働者の就業意欲があることは大変ありがたいことです。

反面、休業4日以上の死傷病災害の半数以上は50歳以上で発生、さらに60歳以上の割合は全体の4分の1を占めています。(「労働者死傷病報告」より)。

最近は、65歳まで働ける環境になってきていますが、雇用契約が60歳以降で1年ごとになるケースも多く、人事担当者から健康状況についてご相談されることが多くなっています。高年齢労働者にとっては、意欲はあっても体力や適応力等心配な面は感じているだけに、雇用が継続されるかは不安な所ではあります。若い方より個別差は大きいので、雇う側も雇われる側も安心するためにも、契約時は勿論ですが、お互いの気になっている点、不安に思っている点等はきちんとすり合わせしておくこと、正しい情報(事実)が言えたり、企業側に入るような関係にしておくことは日頃から大切です。また、雇用継続に必要な条件や能力等を分かりやすく明示することも必要だと思います。

医療職としては、加齢による心身の変化や予防法等の情報提供をしたり、その方にあった方法を一緒に考え行動に移して頂きます。そして、よい習慣の継続をサポートさせて頂きなるべく長く働いていただきたいと願っています、それぞれの仕事内容によって必要な能力は違いますが、今後どのような取り組みを行う必要があるのか、人事だけでなく例えば安全衛生委員会でも話題にしていくことは大切だと思います。

不安をやわらげるためにできること

新型コロナウィルスが毎日報道され、メルマガをお読みいただく頃には終息に向かっていることを心から願うばかりです。

企業としてすでに様々な対応をされていらっしゃることと思います。日本産業衛生学会からも随意新しい情報がアップされております。職域における対策として、基本的な感染予防、人事としての対応、感染リスクが高い環境への対策、企業の法的な対策等が、わかりやすく書かれていますのでご参考にされるといいと思います。

今回の件で、大人たちの不安な様子を見たり、3月に入り急遽学校がお休みになったりと大きな環境の変化に置かれた子供たちへの影響もとても心配です。大人が判らないことは子供たちも不安です。「不安」を少しでもやわらげるには、呼吸法がお勧めです。息をゆっくりはくようにする練習が役に立ちます。

我々保健師は、日頃この「不安」についてのサポートは大きなウェートを占めていると思っています。相談を受ける内容は、仕事や職場の人間関係、経済的なこと、将来のこと、家族のことなどで、日々不安になる要素はたくさんあります。たいていは考えても今はどうしようもない、どうなるものでもないと分かっていることが多いです。ある意味防衛反応で大切なことですが、不安が大きくなってくるとそれに押し潰されて最終的には行動に移せなくなる悪循環スパイラルに入ってしまいます。そんな時、我々はとにかく寄り添い、焦らずゆっくり、じっくりと話しを聴くようにします。それとともに従業員の方の心の自然治癒力を信じて、待つようにも心がけています。シンプルなことと思われるかもしれませんが、とても大切にしていることで、本当に難しいことだと思っています。このやり取りが職場でも家庭でもみんなができる環境になれればいいなと思います。是非皆さんも不安をやわらげるための「呼吸法」と「じっくり聴くこと」をやってみてください。

保健師の働く所

昨日の企業での面談の際のことです。部屋に入って来られた従業員の方の髪の毛は水色で一部金色、片側だけ刈りあがっていました。人は見た目で判断してはいけないですが、インパクトある姿に一瞬、間ができてしまいました(笑)。別のケースで真面目な管理職と休職中お会いしたら、黒髪だったのがみごとな金髪になっていたり、いずれもメンタル不調の方でしたが、髪の毛を色々な色に染めることで、今の自分から変わりたいという心理が働くのかもしれないですね。ちなみに青系は、希望を持たせてくれ、疲れた心身に安静をもたらしてくれる色だそうです。

保健師って、何人ぐらい働いていると思いますか。厚生労働省医政局看護課調べによりますと、平成28年では、看護師は121万665人、保健師は、6万2118人でした。保健師の就業場所としては、約6割は保健所と市町村で、事業所はとても少なく3079人(約5%)です。このうちのほとんどが大規模事業所に常勤でいる保健師ですので、中小企業まで十分行き届いていない現実を分かって頂けるかと思います。また中小企業の保健師は、ほとんどが非常勤で一人職場になります。回数はどのくらいが適当かは決まっているわけではありませんが、100名位で月1回はちょうどいい印象はあります。

中小企業の場合は、訪問した際に会議室がその日の保健師活動の場所になります。産業医の方は大体1時間訪問が多いようですが、私の場合、月1回1時間~3時間位になります。保健師のいる場所のイメージは、色々話ができて安心して休める所「学校の保健室」が一般的にわかりやすいかなと思います。何かあったら「保健室へ行って来いよ」的な場所を皆さんの企業にもあってもいいのではないでしょうか。是非この部分にも労力をかけてみましょう。