「かとく」で面接指導に準ずる措置が今後大事に。

厚生労働省は平成28年6月24日、平成27年度の「過労死等の労災補償状況」を公表しました。過労死等には脳・心臓疾患に関する事案と精神障害によるものがあります。前者の労災請求件数は795 件、支給決定件数は251件で、精神障害の請求件数は1515件、支給決定件数は472件と請求件数は過去最多となっています。平成27年4月からは、過重労働による健康被害の防止等の強化のため、過重労働撲滅特別対策班「かとく」が発足し、東京は労働基準監督官7名が配属されました。

さらに、今年平成28年4月からは全ての労働局に「過重労働特別監督監理官」を各1名配置しました。長時間労働に関する監督指導等を専門に対象範囲も今までの月100時間から月80時間へ、事業場も1万から2万事業場へ拡大となりました。月100時間でなく80時間の長時間労働となると、面接指導に準ずる措置となり、努力義務ですので産業医でなく保健師等が面談をすることが多いです。実際、産業医は月100時間の長時間、ストレスチェックや復職での面接で手一杯なのが現状です。

企業の人事担当者から「かとく」が話題に上がっているようです。これは良いことだと思いますが、担当者を増やしただけで長年の課題がすぐ解決するわけではないので、問題を改善する方策が必要です。しかし、残業が多いのをいっぺんに変えようと思うと企業側にも現場にも違った意味の負担が増えてしまいます。現実問題、業務上残業をゼロにすることは難しいと思いますので、残業を減らしたい場合まず本人が忙しい中でもできる生活習慣の調整をし直したり、仕事の負担軽減ができるように衛生委員会等で話題にすることで、職場全体での助け合う意識も広がり状況が改善していく例もあります。長時間労働は、目に見えるデータですので、これを事実としてとらえ、少なくするために職場としてできることは何か?本人ができることは何か?管理職ができることは?と「できること連鎖」が少しずつ広がっていくといいなと思っています。国の動きへの対応策というよりも、従業員が安心して安全に力を十分発揮できる環境を整えていくという視点で是非取り組んでいただきたいと思っています。

深夜勤務

夜勤や交代勤務というと、体のリズムを崩しやすい、きつい、辛い等の声をよく聞きます。先月私が実施している病院の新人職員向けの研修でも、交代勤務になかなか適応できず、大変と感じている方も多いようでした。また、サポートさせていただいている企業様も交代勤務のパターンが多く、健康管理上大事なテーマになっています。皆様の職場はいかがでしょうか?交代勤務により体のリズムが崩れ、様々な影響が出てくることは容易にイメージできると思います。

夜勤だと、注意力不足からミスが増えませんか?深夜と飲酒時の作業成績を比べた実験では、(Dawson D ,Reid K)要は深夜は酒気帯び運転より注意力散漫という結果が示されています。勿論仕事中は緊張していますので、必ずしもこの結果通りではないかもしれませんが、いずれにしても、深夜作業は日勤帯よりリスクの高い作業と言えるのではないでしょうか。またそういう意味では、夜勤明けも危険がいっぱいです。

安全だけでなく、健康上のリスクとしても肥満や糖尿病、高血圧、メンタルヘルス不調、がん、口腔への影響も深夜の作業は高いと言われています。ちなみに、夜勤者は日勤者に比べ、虫歯や歯肉炎、口内炎になる傾向が顕著で、歯磨きの頻度も少ない傾向だそうです。

企業としても、勤務編成での負担軽減等を行うことができればリスクは軽減すると思います。それだけではなく、仮眠ができる環境づくりや、労働者の中には間違った方法で夜勤に対応している方も多いので教育等も大切です。

夜勤の眠気を和らげるためのポイントは、(1)夜勤前の起床時間は、できるだけいつも通りか、眠い時も1~2時間長めに寝るに留めるようにすること、(2)夜勤明けは、我慢して眠気をやり過ごし、夜早めに一気に寝ること、(3)仮眠する際は、座ったままで眠ると寝すぎない等の工夫がおすすめです。その他では、夜勤の際の食事のとり方や内容なども健康には影響が大きいです。コンビニ等を活用しながらでも、できるだけバランスよく、カロリー抑え目の食事を心かげると良いでしょう。

今やどこも24時間フル回転の職場環境です。できるだけ工夫をして、安全で健康な勤務につなげてください。

隠れた栄養失調(いまどきの栄養失調)

少し前に「新型うつ病・・・」という言葉が人事担当者や管理職から聞かれることがありましたが、「新型栄養失調」という言葉をご存じでしょうか? 栄養失調というと、戦後の食糧難時代や拒食症等の病気によって食べられないイメージがあると思います。しかし、「新型栄養失調」は、3食しっかり食べているのに、必要な栄養素が摂れてないことでおこる栄養不足の状態を言います。

タンパク質だけでなく、ビタミン、ミネラルも不足します。タンパク質は筋肉や血液、臓器を作る材料になりますので、不足すると、骨折や貧血、脳出血、結核、肺炎…などの病気になりやすくなります。ビタミンやミネラルが不足すると、食べ物から摂った栄養をエネルギー生産出来なくなり、体が疲れやすくなったり、脳へのエネルギーも不足して、イライラしやすくなります。

「新型栄養失調」になりやすい方の傾向としては、例えば、肉や卵等の食品をあまり食べない、野菜をあまり食べない(好きではない)、食事に惣菜をよく利用する(揚げ物、サラダ、煮物など)、麺類(ラーメン、パスタ)を好んで食べる、インスタント食品や冷凍食品をよく利用する、コンビニ弁当をよく利用する等が多いようです。思い当たることはありませんか?高齢者とか、ダイエット中の女性だけでなく、メタボリック症候群を気にしている中年男性などが陥りやすいと言われています。時間がない、忙しいという理由で食事のバランスが悪いからです。

対策としては、タンパク質を多く含む魚・肉・卵・乳製品・大豆製品や、ビタミン・ミネラルを多く含む野菜・果物・大豆製品・魚介類をしっかり食べることが大切です。そして、栄養のバランスも意識して摂るようにすることです。おすすめなのは、赤・白・黄・緑・黒とカラフルな色の食材を選ぶようにすると、自然に色々な栄養素を取り入れることができますので、是非お試しください。色を意識するだけなので、簡単です。

栄養状態は、寿命にも直結します。これからの暑くなる季節はとかくのど越しのよい軽いものを食べる傾向になりますのでお気を付け下さい。

スーツ

4月に入り、道を歩いていても新品のスーツ姿の若い人が目につきます。

その隣をスーツが体になじんだ大先輩方が並んで歩いています。その姿を見ながら、この新人さん達も何年かたつと、スーツを上手に着こなしていくのだろうなと。 新人研修でたくさんの初々しい姿に出会えるこの時期は私も元気をもらっています。最近は、新人研修の一コマにメンタルヘルスも話してほしいとのご要望が多くなっていることはとてもありがたいです。

実際入社早々にメンタル不調になったり、やめてしまう方がいる現状もありますので、大事なテーマだと思っています。ただ気合いいっぱいの新人達に、メンタル、ストレス・・・という言葉はイメージしにくいものです。私は「元気に仕事をするためにできることは・・・」を全面にお話ししています。それから、新人の内に社会人としてのよい生活リズムを整えてほしいと思っています。先日もある企業の新人研修で、「寝る前にスマホをしている人?」と聞いた所、予想はしていましたが、なんと全員が手を挙げていました。他の所でも同じような結果でしたし、朝食に関しても半分以上の新人が食べていないという状況もありました。こうなると学生時代からのご家庭での生活習慣から問題があるように思いますが、それを言っても仕方ないので、なぜ朝ごはんを食べないといけないのか、寝る間際にスマホやゲームをするとよくないのか等をしっかりお話しします。

メンタル不調になっている方のほとんどは、生活リズム(食事、睡眠)が崩れています。毎日の当たり前のことゆえ、あまり気にせず後回しになっていますが、気が付いた時にはよくないパターンが出来上がってしまいます。入社2~3年目で体重がぐっと増えたり、高血圧や糖尿の所見が出る人もいます。一旦出来上がったパターンはなかなか修正が難しくなってきます。そういう意味で新人にとってこれからの3カ月、半年は大事な時期になります。社会人として、朝は身支度や新聞を見るのと同じように、朝食もしっかり食べる等のよい生活習慣パターンを今から心がけ整えてくれることを願っています。

是非この時期、人生の大ベテランの皆様も初心に返って頂き生活リズムを見直す機会にして頂ければと思っています。

病気と就労

企業訪問による健康管理を行っていると、体の疾病を抱えながら働いている人が意外と多いのです。しかも、企業がこれらの人をどう扱ったらいいかわからないでいて、とりあえず私と相談してってケースがほとんどです。

病気もガンであるケースが多く、余命10年と言われたりしているので、当然配慮すれば就労できます。 2016年2月に厚生労働省が「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を発表いたしました。これによるとがんの5年生存率は年々上がり平成15年から17年では58.6%、仕事を持ちながらがんで通院している人は32.5万人と推計されます。

がんと診断された人の中には、精神的な動揺や不安から退職を選択するケースもあるし、がんの診断が主要因となってメンタルヘルス不調に陥る場合もあるため、適切な配慮が望ましいのです。では企業側ではどのような就業上の配慮をすればよいでしょうか。(労働者本人から支援を求める申出があり、主治医、産業医等関係者全てが協力的だと仮定)

まず、大きな問題として社内ルールがあげられます。その中でも、休暇制度は日数単位で採られているので短時間の治療が定期的に繰り返される場合などに対応するため、時間単位の休暇制度を検討する必要があるでしょう。また、時差出勤制度、短時間勤務制度や、在宅勤務などの考慮すべきです。とは言え、これらはすべて法の最低基準を超えた措置ですので、その点は労使間で話し合いが必要です。

疾病に対する治療はケースによって違うので、そのことを踏まえ企業としての多くの人の共通項を踏まえた取り組みが今後とも必要です。厚生労働省は、今後、このガイドラインの普及や企業に対する各種支援によって、疾病を抱える方々が治療と職業生活が両立できるような環境整備に取り組んでいくとしています。

タセツに交流

「タセツ」って耳慣れない言葉ですが、漢字で書くと「多接」だそうです。多くの人・物・事に接することを意味するということだそうで、そう言われるとなんとなく分かります。まさしく、多くの人と交流し、さまざまなもの、事柄に接して、創造的な生活を送る・・・。好奇心をもって人生を過ごしていると、活き活きと過ごせるものです。 毎年2月を「全国生活習慣病予防月間」と定めて広く啓発活動が行われています。今年のスローガンは「人・物・事 出会い重ねて 健康寿命」となりました。

健康寿命の秘訣は、「一無・二少・三多」と言われています。一無とは、禁煙のすすめです。タバコの身体への悪影響は知られている所だと思います。二少は、少食・少酒のすすめです。腹八分目は医者いらずと言われているように、暴飲暴食を控えることは健康維持には欠かせません。三多は、多動・多休・多接のすすめです。最初の2つは説明不要ですよね。私は三多の中の特に多接は忘れがちだと思っています。

仕事柄全国色々な所へ出張をすることが多いのですが、先日は新幹線の中で小さなお子さんを連れた親子と隣同士になりました。子供に笑いかけたのをきっかけに、たわいもない会話が始まり、子育てや仕事のことなど色々なお話しになり時間を忘れた楽しい移動となりました。きっと初めて会った親子との時間や空間が、いつもの慌ただしいやり取りや追われた感じと違い私にとっては癒しであったり、よい刺激になったのだと思います。

心の健康維持のためには脳の疲れの回復が大事と言われますが、人・物・事にたくさん接することで、脳も元気になり活力になります。いつまでも興味や好奇心を忘れず、多接を億劫がらずに交流をすることで、健康寿命も若さも保っていきたいものです。是非、今月は皆様も接する人との交流を意識して過ごしてみてはいかがでしょうか。

「上を向いて、365歩のマーチ」で健康寿命アップ

2016年がスタートしました。

今年も働く方が元気に過ごせるように頑張っていきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。

1月は、その年の目標を立てられる方が多いと思います。今よりプラス10分運動を入れるといいことはわかっているのですが、難しいって人に私の方法をお教えします。。

歌の「上を向いて歩こう」と「365歩のマーチ」を意識して口ずさみながら歩くのです。歩くポイントは、

1.下を向いて歩かない。 できれば20メートルくらい前を見て歩いてみましょう!

実際のケースでもあったことですが、これを意識して歩いたらとても気持ちが前向きになったと話してくれた方がいました。心にも影響するようですね。

2.歩幅を広げて歩く。

普段より5センチくらい先に踵を付けて歩くようにしてみましょう。できれば、つま先で蹴るように歩くといいですね。

3.腕をテンポよく振る。

腕の振りが小さいと身体活動量が減ってしまいますので、大きく振ってみましょう。

4.普段より少し早めに歩く。

1を、覚えやすくするため私は歌の、坂本九の「上を向いて歩こう」を思い出しながら、2-4は水前寺清子の「365歩のマーチ」って歌謡曲を、意識して歌いながらやっています。ちょっと曲が古いですかね。でも、ともに前向きな曲なんですよ。日常生活の中には、たくさん活動量アップできるところがあります。通勤、買い物、仕事中、家事、等・・・。なかでも一番手頃なのが、それぞれの場面での歩き方です。

皆さんは普段どんな感じで歩いていますか。ほんの少し歩き方を変えるだけで、エネルギー消費量は結構変わってきます。きびきび歩くことで身体活動量アップにつながります。「上を向いて、365歩のマーチ」で健康寿命を延ばしましょう。

配慮・ハラスメント

服がふさわしくないのではとか、匂いがきついのではって、同じ職場の同僚には言いにくいですよね。言われた方の気持ちを考えると申し訳ないなぁって思います。まあ、それが私どもの価値観だと思いますが・・・。 仕事柄、デリケートな問題を扱います。デリケートだけに日ごろ接点がある同僚には、カドが立つから言いにくい事を、第三者である私が面談で代わって言ったりします。とは言え元来私は、いろいろ気を使います。特にクライアント先、まして初対面の人ならきついことは普通言えません。

毎日その企業にお邪魔しているわけではありません。フレッシュな目で見るということはできますが、日ごろ同僚が気になっていることは分かりません。裏が取れるわけではないので、「周りではこう感じているようだ」ってことをお伝えします。ほとんどの場合、当事者は、指摘された点について気づいていたいケースが多く、当初戸惑うようです。言い方によりますが、直接同じ会社の人が伝えるとハラスメントと取る方もいるようです。

でも、第3者が指摘してよかったと思えるケースが多いのも事実です。言われた方は、めったに言われることのないことなので、その分気を使って、対策を取るケースがほとんどです。服装やにおいの問題などは特にそうですね。

言葉遣いのや性格の問題は、むずかしいですね・・・。意外と周りから問題点が指摘されているケースが多いですし、本人も気にしています。そういう時は、どうすれば改善するかを具体的に提案すると良いすよ。

親の介護

介護は突然やってきます。私も主人も自分の親を同時に介護をしなければなりませんでした。介護と言えば女性がするものというイメージが強かったのですが、今では男性も当たり前です。ましてや働き盛りは大変ですし、事前に準備をしている人は少数でしょう。

最近企業でのご相談もかなり介護の問題は多くなってきています。一見、介護はプライベートな問題、仕事へ持ち込むのはと考えるかもしれませんが、従業員の方とお会いすると介護を抱えている方は睡眠不足やこれからの不安等で心の体もかなり疲弊されています。その状態では、思ったように仕事は進められなくて当然だと思います。

声掛けとして「本当に仕事をしながらよく頑張られていますよ。でも、決して一人だけで抱えないでください。それとまずはあなたの生活を第一優先に考えて進めていきましょう」とお話することは多いです。働く方の介護離職が多い現状もあります。でも、親の介護後の生活もあるのです。我々はつい120%介護しようと思ってしまいます。でも状況に応じて、活用できるサービスを使いながら、できる範囲でしていかれることが大切です。そのことは決して介護をしないのではありません。だって、120%なんて毎日続きません。ほとんどの方は「それでいいのでしょうか・・」と言いながらもと少し安心されます。

一方、仕事面でも、介護で早退や遅刻等をせざる負えない状況が続くと、会社への気兼ねもあり、普段なら上手にやり取りできているものもちょっとした事が気になって悪循環になってしまう人もあるようです。難しいのが自分の気持ちのコントロールです。意外と相談できる先がない時、どんなことでも口に出して整理できる先があるとほっとするものです。

介護の問題はだれでも直面します。企業として、大事な労働力をしっかり守っていくためにも介護と仕事の両立を受け入れていけるような職場環境を作っていくのも大事ですし、介護の心構えや使えるサービス等を紹介する教育も大切です。

健康の秋

こんにちは。

10月に入り、秋を感じます。美味しい物もたくさんあるし、気候もよいので外に出るのも億劫にならないです。特に運動は代謝を高めるのに、秋は最適と言われます。 突然ですが、立ったまま靴下を履けますか?これは「ロコチェック」の一つです。ロコとは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)のことで、運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態で、進行すると介護が必要になるリスクが高くなると言われています。

最近50代からの健康のお話をさせて頂く機会がありますが、自分も含め改めて運動、特に筋力へのケアはこれからの人生のためにも必要です。工場や営業の方の中には、1日中立ちっぱなしや動きっぱなしだから大丈夫と言われますが、筋力ケアはできてない方がほとんどです。ましてデスクワーク中心の方はもっとだと思います。特に加齢とともに筋力がぐっと減ってくる大腿、上腕、腹筋については、軽い負荷でいいので少しずつ取り入れてることが大事です。例えば、歯磨きをしながら、荷物を持ちながら、テレビを見ながら、是非隙間時間を使って筋力アップを心がけてみましょう。それと大切なのは、楽しくやることです。セミナー等では最近参加者と一緒に歌いながら筋力アップトレーニングをしたりします。結構皆さん、大きな声で歌って下さいます。時間も早く過ぎる気がしますし、ストレス解消にもおすすめです。

いつまでも自分でできる、介護いらずの体づくりを意識してみてください。

秋は運動以外にも、紅葉を見たり、秋の味覚を食べたり、外に出て気持ちよい空気を感じたりと、五感を使ってのリフレッシュの時期にもしてみましょう。