義務化されるストレスチェックについて(5月)

厚生労働省から指針が出ましたので制度についてはそちらで詳しく。

高ストレス者とされても 企業が高ストレス者の判定方法を決めるので、あくまでも企業が選んだ手法で点が高かった人が高ストレス者です。そして高ストレス者と言っても、実は、メンタル不調になる人との因果関係が証明されていません。

数が高い傾向の人は、恒常的なのか、短期的なのか。その時の単年度だけ見ても判りませんが、おそらく大部分は個人の認識傾向に左右されることになるでしょう。つまり、現行は経年変化という事では捉えられていないのです。つまり、高ストレス者=リスクが高い人とは、当然になりません。

コストと手間

このテストの結果が優れているという前提なのでしょうが、制度上、個人はストレスチェック結果が判った後、会社に知られていいかの意思表明をする仕組みになっており、システム的には結構手間です。あと、企業によってご事情は千差万別ですが既に使っている産業医や健診機関にお願いするのと、外部を新たにお願いするのではコスト的に大きな違いがでるのではないでしょうか。

有効に使うためには結局は職場環境改善 毎年行うストレスチェック。それを有効に使うためには職場環境改善しかないと思います。ただし、頭痛がして薬を飲んでも根本原因がわからないと本質的には良くなりません。以前書きましたがこのテストでは、結果が悪くても何故悪いかって原因がわかりません。でも、悪いから直せって中間管理職は上から言われるでしょう。原因や改善方法が判るためには、自分だけではダメで皆の協力が必要です。宣伝になりますが、当社では職場環境改善の研修を行っています。

義務化されるストレスチェックについて(4回目)

医師不足(医師以外に解放された理由の1つでは、) 以前の厚生労働省の労働安全衛生法関連の施策では、医師しか関与できない法案が多かったのですが、ストレスチェックの実施者に保健師等と医師以外に 門戸が開放されたのは大きいですし、その理由もあると思っています。理由の1つと思われるのは、医師不足です。2006年と古いデータですが日本で最も人口あたりの医師数が多い京都府でも、人口千人あたり2.7人で、OECD加盟国平均の3.0人に達していないのです。 

ただし、今回の制度上の面接指導は、医師だけが許されているのです。ストレスチェックの義務化という状況で医師不足が続くのならば、医師を増やすか、医師以外に面接指導を許す道を作らないと制度が続かない可能性があります。 結局は医師次第 ストレスチェック制度は大部分は健診機関で受託される事を想定していると思います。私が関わっている中小企業が依頼している健診機関に聞くと、実施者となりうる産業医も保健師もいわゆる体の健診業務は専門ですが、心の問題であるストレスチェック制度へ対応できる人は正直あまりいないと話していました。勿論これから国としても色々専門職に対する研修等も行ってレベルアップは図っていくでしょう。健診機関以外の例えばEAP機関の営業が激しいとかの話を聞きますが、物理的なチェックだけではなくその後、医師の面接が絡む必要があるのでコストはかさむでしょう。 高ストレス者の面接 ストレスチェックの面接は多くの場合は、従来からの産業医にお願いすることになるのではないでしょうか。とは言え、面接を行う医師がその企業の産業医でない場合も往々にしてあり得ます。いずれにしても結果は長時間面談と同じようになるのかなと思いますが、企業にとってコストが掛かりすぎてしまい、負担が少ない仕組みを考えないと普及に障害が出ると思います。

義務化されるストレスチェックについて(3回目)

職場環境改善というが、どう改善するのか?

ストレスチェック制度の趣旨目的の中に、職場環境の改善等により心理的負担を軽減させることが挙げられています。でも、義務ばかりでインセンティブがないと、ストレスチェック自体がおざなりになってしまい、その意義はだんだん薄まるのではと懸念します。

厚生労働省が推奨する職業性ストレス簡易調査票(質問数57問)に基づくソフトウェアーの中身を見ると、職場環境を判定するために上司と同僚の支援、仕事のコントロー ルと量的負担の2種類のグラフを出しそれぞれの交点から、総合健康リスクを導き出しています。これはこれで良く出来たテストだと思います。ただ、大元の質問では結果を聞いているので、そもそもその原因がわからない傾向があります(質問例、一生懸命働かなければならない、上司とどのくらい気軽に話ができますか?等)。問題は原因がわからないと、どうしたら改善できるかの方法も導けないことです。つまり、職場改善を命ぜられた管理職は原因がわからず困ってしまうということです。なので、職場改善には、別の機会に原因分析が必要だと思われます。個人のストレスを取り除くためだけでなく職場にあった仕事に役立つ環境改善を考えたいものです。

管理職への負担

管理職は組織のことだけでなくプレイヤーとしての役割負荷もかかっています。その上職場環境改善やメンタル不調者対応となれば、疲弊するのは目に見えています。管理職をケアするために企業としてどうしていくのか、あるいは国としてこういう改善例がある等事例やツール等を提供していかないといけないと思います。

ストレスチェック義務化には良い点もいっぱいありますが、問題が全て解決されるわけでは在りません。例えば個人が回答を選べる形式であるストレスチェックが固定化されて同じものが毎年行われることは、長期的な効果に疑問が生じますし、そもそもストレスチェックのコストを企業がどう吸収するかというテーゼには何ら答えていません。いずれにしてもこれらの欠点をどう補うかによって、ストレスチェックが効果的に機能すると思います。